訪問介護を開業すると儲かる?主なメリットやデメリットを解説
- 2023.11.29
大阪を中心に介護・福祉事業の起業を考えている方、すでに開業している方向けのサポートを行っている、アステージ社労士・行政書士事務所です。
これから訪問介護の開業を考えている方の中には、儲かるのかどうか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。開業してもまったく儲からないと、事業継続が難しくなってしまいます。
本記事では訪問介護は儲かるのかどうについて、開業のメリットとデメリットなどと一緒に紹介します。
訪問介護を開業すると儲かるのは本当?
厚生労働省の「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要」によると、訪問介護事業所の収益差率は、過去2年間で約6%~7%でした。介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)が約1%~2%、通所介護(デイサービス)が約1%~4%となっており、他の事業と比べて訪問介護の収益差率の高さがわかります。
訪問介護の開業と運営には経営者ともいえる管理者のほか、サービス提供責任者、訪問介護員の配置が必須です。管理者はサービス提供責任者と兼務できます。
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、常勤のサービス提供責任者の平均年収は、月給約32万円×12カ月で約384万円でした。賞与を加算すると、年収は400万円以上と推定できるでしょう。
一般的な正社員の介護職員の平均年収は、月給約23万円×12カ月で約276万円です。賞与を加算しても、サービス提供責任者とは100万円近い賃金差があることがわかります。
参考:厚生労働省「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要」
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
これから訪問介護を開業するメリットとデメリット
訪問介護を開業すると、具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。以下でそれぞれの詳細を解説します。
メリット
主なメリットは次の4つです。
開業しやすい
他の介護事業と比べて、開業しやすいのは大きなメリットといえるでしょう。訪問介護は訪問介護員が利用者の自宅へ伺ってサービスを提供するため、老人ホームやデイサービスといった大がかりな建物・設備が不要です。
基本的には事務室と相談室(または相談スペース)、トイレや洗面といった手洗い施設があれば大丈夫です。主に賃貸契約で借りる場合が大半ですが、マンションオフィスなどの広さはそれほど必要とせず、初期投資を低く抑えられます。
また人員基準も、他の事業と比べて満たしやすいといえます。以下は、利用定員が10名以上のデイサービスでの人員基準です。
- ・管理者
- ・生活相談員
- ・介護職員
- ・看護職員
- ・機能訓練指導員
一方で訪問介護の人員基準は、次の通りです。
- ・管理者
- ・サービス提供責任者
- ・訪問介護員
管理者・サービス提供責任者・訪問介護員は、それぞれ他の職種を2役まで兼務できます。人員基準の詳細は「訪問介護の常勤換算とは?人員配置基準の概要と常勤換算の計算方法を解説」をご覧ください。
安定した収入を得られやすい
訪問介護には介護保険が適用され、サービスにかかった費用の8割~9割は国や自治体が事業所へ支払います。利用者が実費として支払う費用は1割~2割のため、費用を回収できないリスクを抑えられ、安定した収入を得られやすいでしょう。
また内閣府の「令和5年版高齢社会白書(概要版)」によると、2022年10月1日時点での総人口に占める65歳以上人口の割合は29%でした。2030年には30.8%、2040年には34.8%まで高まると予測され、今後はさらなる訪問介護の需要増加が見込まれます。
参考:内閣府「令和5年版高齢社会白書(概要版)」
無理なく事業を拡大しやすい
将来的に利用者数が多くなったとしても、無理なく事業を拡大しやすいのもメリットのひとつです。事業所を増設する必要がなく、サービス提供に必要な訪問介護員の確保だけで済みます。
軌道に乗れば居宅介護支援事業所(ケアプランセンター)のほか、居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護・移動支援といった居宅系の障害福祉事業など、隣接サービスへ展開しやすいでしょう。また訪問介護の開業時から、併設するケースもあります。
社会に貢献できる
訪問介護を含む介護事業は、サポートを必要とする人たちができるだけ自分らしく、そして安心して暮らせるためのサービスを提供するものです。
公共性が高いため、単に収益を求めるだけでなく、事業を通じて社会に貢献できるのもメリットといえるでしょう。
デメリット
一方で、以下のようなデメリットがある点には注意しましょう。
社会情勢の影響を受けやすい
特に訪問介護やデイサービスといった在宅系サービスは、新型コロナウイルス感染症を始めとした様々な感染症の流行、物価の上昇などの社会情勢の影響を受けやすいといわれています。
東京商工リサーチによると、2023年1月~8月の訪問介護の倒産件数は44件でした。2000年以降の同期間で、過去最多の件数です。
新型コロナウイルス感染症による訪問介護員の不足や利用控えのほか、介護用品や燃料代といった物価高も要因のひとつと考えられます。
参考:株式会社東京商工リサーチ「~ 2023年1-8月 「訪問介護事業者」の倒産動向調査 ~
開業後は当面の運転資金が必要
訪問介護の開業直後は利用者数が少なく、まとまった収益を上げられない可能性があります。
また介護報酬は請求してから実際に支払われるまで数カ月かかるため、開業後は当面の運転資金を確保しておく必要があるでしょう。
以下の記事で開業に向けた資金調達について紹介しているため、ぜひご覧ください。
訪問介護の開業資金はいくら必要?費用の内訳や資金調達方法について解説
介護障害福祉事業所の開業に向けた資金調達方法は?融資のポイントも解説
訪問介護を開業する際の注意点
訪問介護をスムーズに開業し、順調に伸ばしていくためには、いくつかの注意点があります。
利用者確保に向けた営業活動をする
数ある介護事業の中でも開業しやすい形態のため、今後も新規の訪問介護事業所は増えていくものと思われます。多くのライバルの中で安定した運営を進めていくためには、利用者確保に向けた営業活動が欠かせません。
居宅介護支援事業所や地域包括支援センターへ営業に行くほか、これから利用を考えている高齢者やその家族向けに、サービス内容を知ってもらうためのパンフレットやホームページを作成する方法などが考えられるでしょう。
また以下の記事で営業活動について解説しているため、ぜひチェックしてみてください。
訪問介護の開業に向けた営業とは?利用者増につなげるポイントを解説
介護福祉事業の営業強化について ~事業開始フェーズから拡大フェーズまで~
従業員が働きやすい環境をつくる
訪問介護員といった従業員の不足によって運営がうまく進まなかったり、倒産したりするケースは実際にあることです。従業員を採用し、定着させるためには、長く働きやすい環境をつくることが求められます。
「身体的な負担を減らす」「結婚や出産後も、無理なく働き続けられる体制をつくる」など、それぞれの事業所が抱える課題に応じた対策を講じましょう。
また働きがいを持ってもらうために、研修への参加や資格取得のサポートなど、スキルアップに向けた取り組みもおすすめです。
人員・設備・運営基準を正しく理解する
訪問介護を開業・運営するためには、定められた人員・設備・運営基準を満たす必要があります。基準を満たしていないと違反となり、指定の取り消しといった行政処分を受けるかもしれません。
また基準の理解のほか、開業資金の確保や法人格の取得など、開業に必要な作業は多岐に渡ります。社会保険労務士といった専門職の中には、訪問介護の開業をサポートしているところがあるため、開業の段階から利用すると安心です。
参考:大阪府「訪問介護 指定申請について」
まとめ
他の介護事業と比べて収益差率が高いことから、訪問介護の開業は介護事業の中で儲かるといえるでしょう。また総人口に占める65歳以上人口の割合は今後も増加傾向にあり、安定した収入を得られるのも大きなメリットです。
開業と運営には人員・設備・運営基準を正しく理解する必要があり、社会保険労務士といった専門職のサポートを仰ぐとよいでしょう。
アステージ社労士・行政書士事務所では、訪問介護の開業を考えている方向けに「開業応援パック」を提供しています。訪問介護の開業でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
執筆者情報
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事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
【代表メッセージ】
「介護事業開業サポートセンター」では、これから介護・福祉事業をスタートされる方および既に開業されている方の為に必要な手続きをトータルでサポートしております。
介護・福祉事業の創業を数多くお手伝いしている実績をもとに、法人設立・指定申請などの手続き、助成金や融資、開設後の運営もご相談頂ける「身近な専門家」として、常にお客様の立場に立ったサービスを心がけ、全力でお手伝いさせて頂きます。