訪問介護の基本報酬を知っておこう!報酬引き下げの影響と対策も紹介
- 2024.06.04
大阪を中心に介護・福祉事業の起業を考えている方、すでに開業している方向けのサポートを行っている、アステージ社労士・行政書士事務所です。
訪問介護事業を運営する上で知っておくべきことのひとつが、基本報酬の仕組みです。どのような仕組みで報酬を算定するのかを理解しておくことで、事業の適切な運営につなげられるでしょう。
本記事では訪問介護の基本報酬について、報酬引き下げの影響や対策と一緒に紹介します。
訪問介護における基本報酬とは?基本の仕組み
基本報酬とは、利用者に提供したサービスに対する報酬のことです。サービスの単位が基本報酬となり、介護保険制度では、1単位が10円に換算されます。訪問介護における基本報酬は、身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3種類に分けられ、それぞれの報酬額は次のとおりです。
サービスの種類 |
分類 |
報酬額(単位数) |
身体介護 |
20分未満 |
163単位 |
20分以上30分未満 |
244単位 |
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30分以上1時間未満 |
387単位 |
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1時間1条1時間30分未満 |
567単位 |
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1時間以降30分を増すごとに算定 |
82単位 |
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生活援助 |
20分以上45分未満 |
179単位 |
45分以上 |
220単位 |
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身体介護に引き続いて生活援助を行った場合 |
65単位 |
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通院等乗降介助 |
|
97単位 |
上記の報酬額(単位数)は、2024年4月からのものです。いずれの分類でも、単位は引き下げとなりました。報酬が引き下げられた理由として、利益率が全介護サービスの平均を上回っていたことが挙げられます。
報酬改定に関するポイントは、「2024年度 訪問介護の介護報酬改定のポイント10項目|訪問介護事業所が行うべき対策とは」で解説しているため、ぜひご覧ください。
身体介護
食事や排泄、入浴といった利用者の身体へ直接触れて提供するサービスが、身体介護です。
食事介助や排泄介助といった特定の行為だけでなく、関わる一連の行為が身体介護に含まれます。たとえば、食事介助であれば「調理」「配膳」「利用者にエプロンをかける」といった食前の準備のほか、「後片付け」「口腔ケア」といった食後の行為も、身体介護に含まれるのがポイントです。
生活援助
生活援助とは、利用者が自宅で自立した生活を送れるよう、介護の視点を持った家事サービスのことです。調理や配膳、掃除、洗濯、衣類の整理、買い物などが含まれます。
以下のサービスは、生活援助での提供が禁止されています。
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・利用者と家族の食事の準備や来客対応など
・利用者本人以外への支援・タバコや酒の買い出し
・ペットの世話といった日常生活で支援が必要のないもの
・エアコンの掃除や家具の組み立てといった、一般的な家事とはいいがたい行為
・医療行為
身体介護と同様に、ケアマネジャーが作成したケアプランに記載された以外の支援は提供できません。
通院等乗降介助
利用者が通院などをする際に必要な移動介助、通院先での受診手続きの介助などをするのが、通院等乗降介助です。
訪問介護事業所の訪問介護員などが、自ら運転する車両での送迎に付随して利用するサービスで、車両への乗車まで・降車から受診などの手続きまで・受診後から車両への乗車まで・降車から屋内外における移動までが対象となります。
詳細は「通院等乗降介助とはどのようなサービス?対象者や適用範囲も解説」をご覧ください。
参考:総務省「訪問介護における通院等乗降介助」
訪問介護における基本報酬の計算方法
訪問介護では「前回のサービス提供から2時間以上空けないと、2つのサービス提供時間を分離できない」、いわゆる「2時間ルール」と呼ばれる決まりが設けられている点に注意が必要です。一人の利用者に対して3時間や4時間といった長時間のサービス提供では、介護職員の移動時間がなくなり、その結果、サービス提供効率がアップします。そのため、報酬単価が減る仕組みをとっています。
以下で、訪問介護における基本報酬の計算方法を見ていきましょう。
サービス間に2時間以上の空きがある場合
たとえば、9:30~10:00まで身体介護の清拭をして、2時間空けてから12:00~12:30まで身体介護の食事介助をした場合の基本報酬は、「387単位+387単位=774単位」です。
サービス間に2時間の時間を空けているため、それぞれのサービスを分けて基本報酬を計算できます。
サービス間に2時間以上の空きがない場合
11:30~12:00まで身体介護の清拭をして、2時間空けてから12:00~12:30まで身体介護の食事介助をした場合の基本報酬は、「1時間以上1時間30未満の567単位」です。
サービス間に2時間以上の空きがないため、2つのサービス提供時間を1つに合算して基本報酬を出します。たとえば、他の事業所が上記の清拭を担当、自事業所が食事介助を担当した場合も同様です。
2時間ルールが適用されないケース
訪問介護のサービス提供には基本的に2時間ルールが適用されますが、以下のケースに該当する場合は適用されません。
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・緊急時のサービス提供
・看取り期のサービス提供
・身体02の提供
・通院等乗降介助の提供
利用者の急変や生活上のトラブルといった、あらかじめ予想できない状況下でのサービス提供は、2時間ルールが適用されません。また医学的知見に基づき、医師が「回復の見込みがない」と判断した場合のサービス提供も同様です。
身体02とは「20分未満の身体介護」のひとつです。01と02の2つに分けられ、頻回ではない利用が01、頻回な利用が02となっています。身体02を算定するためには、事業所の体制要件と利用者要件を満たす必要がありますが、2時間ルールは適用されません。
また先で述べた通院等乗降介助も、2時間ルールが適用されないサービスです。
訪問介護の報酬引き下げに伴う影響と対策
前述したように、2024年4月より訪問介護の介護報酬が引き下げとなりました。
介護報酬の引き下げによって利益率も低下し、事業所の縮小や閉鎖などが懸念されるでしょう。また減少した分の利益を補完するために、人件費や福利厚生費、研修費などがカットされ、人材確保が困難となると予想されます。
さらに優秀なスタッフが集まらない、育たない事業所が増え、利用者に対するサービスの質も考えられることです。
主な対策として、介護職員等処遇改善加算や特定事業所加算の取得が挙げられます。詳細は「2024年度 訪問介護の介護報酬改定のポイント10項目|訪問介護事業所が行うべき対策とは」の記事で解説しているため、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
訪問介護の基本報酬とは、利用者に提供したサービスに対する報酬のことです。サービスの単位が基本報酬となり、1単位が10円に換算されます。2024年4月より、訪問介護の基本報酬は、すべての分類にて引き下げられました。
基本報酬を算定するときは、2時間ルールに注意が必要です。いくつかのケースを除いて、サービス間に2時間の空きがないと、報酬単価が減ってしまいます。
アステージ社労士・行政書士事務所では、介護報酬や介護保険法に関する最新の情報を提供しているほか、労務管理の相談、各種手続きの代行などを行っています。どうぞ気軽にご相談ください。
執筆者情報
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事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
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