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訪問介護の常勤換算とは?人員配置基準の概要と常勤換算の計算方法を解説

2023.10.17
訪問介護の常勤換算とは?人員配置基準の概要と常勤換算の計算方法を解説

訪問介護事業を開業・運営するには、介護保険法で定められた人員配置基準を満たす必要があり、人員の換算方法として「常勤換算」が用いられます。

常勤換算の計算方法や注意点について理解し、正しく実施することで、人員配置基準の順守と適切な介護事業の運営に役立つはずです。

本記事では、訪問介護の常勤換算や人員配置基準の概要と、常勤換算の計算方法、計算する際の注意点について解説します。

訪問介護の常勤換算とは

常勤換算とは、介護事業所の職員数を「常勤に換算すると何人であるか」を示したものです。

介護報酬制度における「常勤」は、通常32時間以上勤務する従業員を意味します。なお、同一事業者が運営する他の事業所での職務を同時に遂行できる場合は、勤務時間を合算して常勤とすることが認められています。

対して、「専従」はサービス提供時間帯中に他の職務に従事しない従業者を指し、雇用形態は問われません。

介護事業所の従業員には、正社員・パートタイム・アルバイトなどの雇用形態による労働時間の違いがあり、事業所の人員を正確に評価するために常勤換算が用いられます

出典:人員配置基準等 (介護人材の確保と介護現場の生産性の向上) –  介護報酬における人員配置基準の考え方|厚生労働省

訪問介護の人員配置基準について

訪問介護の人員配置基準とは、介護事業所において適切な介護サービスを提供するために必要な専門スタッフの、最低配置基準を定めた制度です。

訪問介護事業者は、「指定訪問介護事業所ごとに、常勤換算で2.5人以上」など、自治体で決められた人数の介護職員を配置する必要があります

運営基準上、配置が必要な職種は次の通りです。

職種

資格要件

配置基準

管理者

なし

専らその職務に従事する常勤の者1名

サービス提供責任者

・介護福祉士
・介護職員基礎研修課程修了者
・介護職員実務者研修課程修了者
・看護師、准看護師、保健師
・訪問介護員養成研修1級課程修了者

訪問介護員の中から専ら指定。訪問介護の職務に従事する常勤の者を利用者40人又はその端数を増すごとに1名以上

訪問介護員

・介護福祉士、看護師、准看護師、保健師
・介護職員基礎研修課程修了者、実務者研修終了者
・訪問介護員養成研修1級~2級課程修了者

常勤換算方法で2.5以上(サービス提供責任者含む)

出典:事業者指定申請について|大阪市福祉局 高齢者施策部

訪問介護員の資格要件として、介護福祉士や実務者研修修了者などの基準が設けられています。

サービス提供責任者は、サービス提供時間または訪問介護員数に応じて配置すべき人数が変化します。

管理者は常勤である必要があり、通常は訪問介護職員とは異なる職務を担当します。

ただし、管理者が同じ事業所の訪問介護員としても働く場合や、同一敷地内や近隣に他の事業所や施設があり、これらの職務が管理業務に支障をきたさない場合は、他の職務を兼任できるものとされています。

出典:人員配置基準等 (介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)|厚生労働省指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について(◆平成11年09月17日老企第25号)

訪問介護の常勤換算の計算方法

常勤換算は、通常1カ月(4週間)の労働時間をもとに計算します。

計算方法は、非常勤を含む全介護職員の1カ月の勤務時間を、常勤者が1カ月間に勤務すべき時間(32時間以上)で割ることで求められます。

計算手順は、次の通りです。

  1. 常勤者の月の勤務時間を計算する
  2. 非常勤を含むすべての介護職員の勤務時間を計算する
  3. 介護職員の労働時間を常勤の労働時間で割る
  4. 各スタッフの計算結果を合算し、小数点第2位以下を切り捨て

この計算方法により、常勤の従業者の必要数を算出できます。

常勤換算の計算例

常勤換算の計算例を見てみましょう。次のような訪問介護事業所を想定しています。

  • Aさん(常勤・正社員):1日8時間 × 週5日=40時間/週
  • Bさん(常勤・正社員):1日8時間 × 週4日=32時間/週
  • Cさん(非常勤・パート):1日6時間 × 週3日=18時間/週
  • Dさん(非常勤・パート):1日5時間 × 週4日=20時間/週
  • Eさん(非常勤・アルバイト):1日4時間 × 週2日=8時間//週

なお、この事業所は1週間の労働時間を40時間以下、常勤者の月の勤務時間を「1日8時間 × 週5日 × 4週=160時間」と設定しているものとします。

上記の条件に基づいて、常勤換算人数の計算を行います。

①常勤者の月の勤務時間を計算する
Aさん:40時間 × 4週間=160時間/月
Bさん:32時間 × 4週間=128時間/月

②非常勤含むすべての介護職員の勤務時間を計算する
Cさん:18時間 × 4週間=72時間/月
Dさん:20時間 × 4週間=80時間/月
Eさん:8時間 × 4週間=32時間/月

③すべての介護職員の労働時間を常勤の労働時間で割る
Aさん:160時間 ÷ 160時間 = 1人
Bさん:128時間 ÷ 160時間 = 0.8人
Cさん:72時間 ÷ 160時間 = 0.45人
Dさん:80時間 ÷ 160時間=0.5人
Eさん:32時間 ÷ 160時間 = 0.2人

④各スタッフの計算結果を合算し、小数点第2位以下を切り捨てる
合計:1人 + 0.8人 + 0.45人 + 0.5人 + 0.2人=2.95人 → 2.9人
したがって、この訪問介護事業所における常勤換算人数は、2.9人となります。

「常勤換算で2.5人以上」と規定されている自治体であれば、この事業所は常勤換算人数の基準をクリアしていると判断できま

厚生労働省の常勤換算計算シートの使い方

厚生労働省では「常勤換算計算シート」を公開しており、活用することで、ここまでの計算を自動計算することが可能です。

厚生労働省発行の常勤換算表

引用:常勤換算計算シート|厚生労働省

ツールの使い方は簡単です。まず、医療機関における「常勤の従事者が勤務すべき1週間の所定労働時間」の欄に時間数を入力し、その後に常勤の人数を指定します。

非常勤の勤務時間を対応する一覧表に記入すると、自動的に常勤換算の結果がページ下部に表示されます。

▼常勤換算計算ツール(※下記をクリックすると自動でエクセルシートのダウンロードが開始しますので、ご注意ください)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/xls/jyoukin_kansan_2020.xlsx

訪問介護の常勤換算における注意点

訪問介護の人員を常勤換算で算出する際には、次の注意点に気をつけましょう。

  • 人員が足りないと人員基準違反となり、事業者指定が受けられない
  • 介護報酬改定への対応が必要
  • 待機時間の取り扱いについて
  • 有休や育休の取り扱いについて
  • 訪問介護員とサービス提供責任者を兼務する場合の取り扱いについて

注意点について、一つずつ解説します。

人員が足りないと人員基準違反となり、事業者指定が受けられない

訪問介護の人員配置基準は、適切な介護サービスを提供するために不可欠な要件です。人員基準を満たさなければ、そもそもの開業のための事業者指定を受けられません

また開業後に、介護職員の急な退職などにより人員基準を下回ると、各自治体から営業休止や廃止の通告といった処分が行われる可能性があります。

その後、適切な対応を取らなかった場合、介護報酬の返還や指定取消などの行政処分が行われることもあるため注意しましょう

人員基準違反を防ぐためにも、自治体に報告・相談して指導を受けることをおすすめします。

介護報酬改定への対応が必要

介護業界では人手不足が深刻な問題であり、職員の離職や時短勤務の増加も常勤換算に影響します。

このような状況を緩和する目的で、令和3年度の介護報酬改定では、職員の状況に応じた常勤換算の見直しが行われました

具体的には、「育児休暇や時短勤務制度を利用する場合、週30時間以上の勤務があれば常勤とみなす」といった内容の措置が導入されています。

出典:令和3年度介護報酬改定における 改定事項について – 人員配置基準における両立支援への配慮|厚生労働省

介護報酬改定の内容は、訪問介護を含む介護サービス全体に適用され、職員の時短勤務などによって人員基準未満となるリスクが軽減されると期待されています。

なお、介護報酬改定は3年ごとに大きな変更があり、次回は令和6年(2024年)に予定されています。

職員と利用者の双方にとってメリットのある環境を整えるためにも、事業者として介護報酬改定への対応が求められます

待機時間の取り扱いについて

訪問介護の常勤換算では、待機時間の取り扱いについても規定されています。

令和3年1月15日発行の「介護保険最新情報」で内容の周知徹底が促されており、要点をまとめると、次の通りです。

  • 待機時間とは、訪問介護職員が事業所外で待つ時間を指す
  • 待機時間は労働時間として計算し、常勤換算に考慮すること
  • 正確な待機時間の記録が必要で、開始と終了を文書化し保存すること
  • 常勤換算計算に待機時間を含め、労働時間を設定すること
  • 待機時間の取り扱いは法的規制と整合的である必要がある
  • 職員に待機時間について説明し、理解を促進しサポートを提供すること

職員に対する公平かつ適切な報酬と、サービスの質を維持するためにも、常勤換算における待機時間の取り扱い方を理解しておくことが重要です。

有休や育休の取り扱いについて

有休や育休については、令和3年度の介護報酬改定にて大きな変更がありました。以下に変更箇所を引用させていただきます。

・ 「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。

・ 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。

・ 人員配置基準や報酬算定において「常勤」での配置が求められる職員が、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合に、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員配置基準を満たすことを認める。

この場合において、常勤職員の割合を要件とするサービス提供体制強化加算等の加算について、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合、当該職員についても常勤職員の割合に含めることを認める。

引用:令和3年度介護報酬改定における 改定事項について – 人員配置基準における両立支援への配慮|厚生労働省

内容をまとめると、次の通りです。

  • 育児や介護の時短勤務制度を利用する場合、週に30時間以上勤務している者は常勤換算上、「常勤」として扱える
  • 必要な職員が育休や介護休業を取得した場合、同等の資質を持つ非常勤職員を計算に含めることができる
  • サービス提供体制強化加算などで常勤職員の割合が必要な場合、育休や介護休業を取得した職員も割合に含めること

有休や育休も、一定の条件をクリアすれば常勤として扱うことが可能です人員配置基準の達成にも影響があるため、常勤換算上の有休や育休の取り扱いには注意しましょう。

訪問介護員とサービス提供責任者を兼務する場合の取り扱いについて

運営上、訪問介護員とサービス提供責任者を兼務するケースもあるでしょう。

訪問介護員とサービス提供責任者の兼務については、一部の自治体では、次のように兼務が認められているケースもあります。

訪問介護員の常勤換算にあたっては、原則として、管理者としての勤務時間を控除し、訪問介護員としての勤務時間のみを常勤換算の対象とする。

ただし、管理者としての勤務時間を明確に区分することが困難な場合であって、サービス提供上支障ない場合には、管理者としての勤務時間についても算入することもやむを得ない。

引用:常勤換算の取扱い|新潟県

常勤換算上の兼務に関する条件や基準は地域によって異なるため、自治体の法令や規定を確認しましょう

兼務が許可されない場合、別々に人員を配置する必要があり、これに伴うコストや労務管理にも注意が必要です。

労務や給与計算については、こちらをあわせてご覧ください。

関連記事:訪問介護・訪問看護の労務管理とは?効率化する方法も紹介

まとめ

訪問介護の常勤換算とは、介護事業所の職員数を常勤に換算した人数を示したものです。

訪問介護の人員配置基準は、適切な介護サービスを提供するために不可欠な要件であり、人員基準を満たさなければ、開業のための事業者指定を受けられません。

多様な雇用形態がある訪問介護の労務や給与計算については、訪問看護/介護・福祉事業に強い社会保険労務士へ委託するのもおすすめです。

アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」では、訪問看護/介護・福祉事業に対する専門的な支援を提供しています。

社労士・行政書士・介護福祉士など、資格を持つ経験豊富なスタッフが在籍しており、労務・給与計算・処遇改善加算などに関するさまざまなサービスを提供しています。訪問介護事業に関するお悩みについて、ぜひ一度ご相談ください

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執筆者情報

佐藤壱磨
佐藤壱磨
事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
【代表メッセージ】
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