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訪問看護のBCPとは?いつまでに策定すべき?2024年の義務化に向けた策定方法・ポイント

2023.12.13
訪問看護のBCPとは?いつまでに策定すべき?2024年の義務化に向けた策定方法・ポイント

「令和3年度 介護報酬改定」および「令和4年度 診療報酬改定」により、介護事業所の緊急時におけるBCP(業務継続計画)策定が義務化されました。

BCPは自然災害や感染症パンデミックなどの状況下でも事業を継続し、利用者や職員、事業自体を保護するための計画です。2024年(令和6年)4月から完全義務化となるため、3月末までにすべての介護事業所が策定する必要があり、運用基盤を構築するためにも早めの準備が求められます

本記事では、訪問看護のBCPの概要や目的、策定方法とポイント、作成例について解説します。

介護事業特化の専門家がBCP策定をサポート|介護事業開業サポートセンター

訪問看護のBCPとは

そもそも「BCP」は、「Business Continuity Plan」の略称であり、災害・感染症・テロ・大事故などの不測の事態に備え、「重要な事業の中断を防ぎ、中断しても迅速に復旧すること」を目的とした計画および計画書です。

業種を問わず、企業全体での策定が求められており、訪問看護ステーションなどの訪問看護事業も同様に対応する必要があります

出典:介護事業者における業務継続計画(BCP)について|厚生労働省

いつまでに策定すべき?

介護事業所のBCP策定は、2024年(令和6年)4月1日から完全義務化となるため、訪問看護などすべての介護サービス事業者は、2024年3月末までにBCPを策定しなければなりません

2021年(令和3年)に発表された以下の「介護報酬改定」に記載されている通り、これまで3年の経過措置があったものの、いよいよ2024年からは義務化となります。

○業務継続に向けた取組の強化

感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。(※3年の経過措置期間を設ける)
引用:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

BCPの策定・運用の基盤を構築するためにも、早めに準備を進めることをおすすめします

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BCPと災害対策マニュアルとの違い

BCPと似た計画書として「災害対策マニュアル(防災計画)」があるため、その違いについて解説します。

災害対策マニュアル(防災計画)は、災害発生後の緊急対応時の行動を示すマニュアルです。主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」です。地震や水害、火災などの異なる災害に対応するために、それぞれのリスクや事象に基づき作成されます。

一方でBCPは、感染症・地震・水害・火災など具体的な原因に依存せず、どのような災害にも対応可能な内容となっています。

BCPは災害対策マニュアル(防災計画)の内容に加え、重要業務の優先的な継続・復旧を目指すものであり、両者は密接に関連するものであるといえます。

出典:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン|厚生労働省

訪問看護におけるBCPの目的

訪問看護におけるBCPの目的は、一般社団法人 全国訪問看護事業協会が公開している「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)」の資料では、以下のように記載されています。

訪問看護ステーションにおけるBCPの目的は、災害時に職員の安全を確保しつつ、利用者の生命と生活を維持するために看護サービスの提供を継続させ、地域の医療・介護資源である訪問看護ステーションを存続させることです。
引用:自然災害発生時における業務継続計画(BCP)(※ダウンロード形式)

内容をまとめると、以下の2点です。

  • 災害時における職員の安全確保
  • 看護サービスの提供を継続させ、利用者の生命と生活を維持すること

BCPの目的は、災害時や緊急時であっても、職員の安全確保とともに訪問看護サービスの提供を継続し、地域の医療・介護資源を支える役割を果たすことといえます。

訪問看護でBCP策定が義務化された背景

これまでは努力義務とされていた訪問看護のBCP策定が、「完全義務化」となった背景には、世界的な感染症の発生や、頻発する自然災害(台風・地震・大雨など)による影響があります

政府はこのような感染症や災害への対応力強化のために、緊急時でも介護サービスの継続・早期再開できる仕組みの整備を進め、「令和3年度介護報酬改定」においてBCP策定を義務付けたとしています。

出典:令和3年度介護報酬改定の主な事項について|厚生労働省

訪問看護に求められる3つのBCP

訪問看護に求められる3つのBCP

引用:BCP 策定の手引き 訪問看護編|厚生労働省

訪問看護のBCPの実効性を高めるためには、地域の視点から医療・ケアの継続を考える、以下の3つのアプローチが有効と考えられています。

  • 機関型BCP
  • 連携型BCP
  • 地域BCP

それぞれ解説します。

機関型BCP

機関型BCPは、自施設(自分たちの訪問看護ステーションや訪問看護事業所)の業務を継続するための計画です。

主な役割は、各機関で独自にBCPを策定し、定期的に見直し・改善を行いながら、業務の連続性の向上を目指すことです。

連携型BCP

連携型BCPは、同業や類似の訪問看護・介護機関と協力し、有事の際に人員や物資などのリソースを共有して業務を継続する計画です。

特に、小規模な訪問看護・介護事業所でスタッフが不足した場合には、利用者へのサービス提供を確保するため、地域のヘルスケア提供機関が協力して一つの組織として対応することが求められます。

地域BCP

地域BCPは、医療・ケア提供を継続し早期復旧を目指す計画であり、機関型BCPと連携型BCPを内包するものです。訪問看護・介護など多職種多機関が協力し、地域住民の生命・健康・暮らしを守ることを目的としています。

全国に1.5万以上の訪問看護ステーションがある中で、1事業所あたりの平均看護職員数は4.5人となっており、看護職員5名未満の小規模事業所が多いことが分かっています。

訪問看護事業の自然災害や感染症などの有事における対応は、病院や診療所など他の事業に比べて脆弱性が高いといえます。

そのため、大規模な災害や感染症拡大時には、地域全体で協力し、緊急時の対応を最適化して住民の安全を確保することが重要です。また、通常時から近隣の事業所との相互協力や協定を築くことや、行政機関や医療・介護機関との連携を強化することが求められます。

出典:令和5年度 訪問看護ステーション数 調査結果|一般社団法人全国訪問看護事業協会看護師等(看護職員)の確保を巡る状況|厚生労働省

訪問看護のBCP策定方法

では、具体的に訪問看護のBCPはどのように策定すれば良いのでしょうか。

ここでは、訪問看護のBCP策定方法を、次の6ステップで解説します。

  1. BCP策定の目的と基本方針を明確にする
  2. 現状の把握とリスク評価による優先順位の決定(リスクアセスメント)
  3. 初期対応・緊急対応のマニュアル策定(災害対策マニュアル)
  4. 業務への影響の分析
  5. 事業継続のための戦略策定
  6. BCPの文書化

BCP策定の目的と基本方針を明確にする

はじめに、BCP策定の目的と基本方針を明確にしておきましょう

目的や基本方針は、災害時の訪問看護の立場や姿勢を具体的に示すものであり、BCPに対する組織の基本的な考え方となります。施設の理念や地域の特性、地域の災害経験を考慮した上で検討しましょう。

また、組織の中でBCPに関する統括を行う責任者や、運用や災害時のBCP発動を担当する責任者を設け、それぞれの役割を明確にしておくことも大切です。

現状の把握とリスク評価による優先順位の決定(リスクアセスメント)

次に、起こりうる災害と組織体制の二つの側面から、リスクの特定・評価・分析(リスクアセスメント)を行います。

1. 起こりうる災害の洗い出しと評価
自然災害(地震・台風・大雨など)・感染症・人災・事故など、可能性のある災害をリストアップします。各災害の発生頻度と事業への影響度を評価した上で、BCP策定の優先順位を設定しましょう。

2. 組織体制におけるリスクや強みの把握
職員の勤務形態・通勤時間・災害看護のスキルなど、組織内のリスクと強みを確認します。家族の有無やスキルのレベルなどを考慮し、災害時のスタッフの対応可能性を整理しておくと良いでしょう。

初期対応・緊急対応のマニュアル策定(災害対策マニュアル)

災害や緊急事態においては、迅速かつ効果的な初期対応と緊急対応が求められます。初期対応・緊急対応のマニュアル策定は、災害対策マニュアルに含まれる部分でもあります。

1. リスクごとのアクションカードやマネジメントシートの作成
災害や事故ごとに、初期対応の手順や行動を簡潔かつ明確に示す「アクションカード」や「マネジメントシート」を作成しておきましょう。

2. インシデントマネジメントの内容と手順の検討
災害対策マニュアルを基に、初期対応の手順やBCPを発動する判断基準を詳細に検討しておきます。

業務への影響の分析

災害時に優先的に復旧すべき業務を定めておくことで、迅速な対応が可能になります。

これには、「BIA(業務影響分析)」の評価方法が役立つでしょう。BIAは、次の3つのステップで進めます。

  1. 通常業務の洗い出し
  2. 優先業務の決定
  3. 業務影響分析

通常業務のプロセス(訪問看護サービス・文書管理・連絡業務・施設保守など)を、細かく洗い出し、業務の重要性に基づき優先度を設定します。

業務の優先度は、「優先業務」「縮小業務(一時的に縮小可能な業務)」「一時中断業務(緊急時に中断される業務)」の3つに区分できます。継続性に影響を与えるボトルネックや、リスク要因を特定しておきましょう。

事業継続のための戦略策定

これまでの分析や検討結果をもとに、事業継続のための戦略策定を行います。

1. BCPの枠組みの検討
BCPの対象・範囲・目標・実行プロセス・関係者の役割などを具体的に検討し、BCPの基本的な枠組みを検討します。

2. 組織としての業務継続戦略を検討
組織として、事業継続を確実にするための方針やアプローチを検討しましょう。具体的には、人員配置戦略・施設利用戦略・情報システムの利用戦略などです。

BCPの文書化

策定した戦略を文書化します。緊急時における業務プロセス・連絡手順・担当者の役割・設備の点検・保守スケジュール・代替手段など、詳細な説明を文書として作成します。

文書は組織内の全関係者が利用でき、わかりやすい形式で提供する必要があります

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訪問看護のBCPを策定する際のポイント

訪問看護のBCPを策定する際には、次の2つのポイントを押さえることで効果的な運用につながるでしょう。

緊急時に実行可能な手順にする

緊急時の被害を最小限に抑え、スムーズな業務継続を実現するためには、実行可能な手順を策定することがポイントです。

例えば、緊急時の手順として、訪問看護車両の確保やドライバーの配置、訪問スケジュールの見直し、連絡体制の構築など、実行可能な内容を事前に検討しておくと良いでしょう。この時、地域ごとの異なる災害リスクに合わせ、調整することが重要です。

策定後も内容の更新・改善を続ける

BCPは、一度策定して終わりではありません。組織や環境の変化、災害リスクの変動に合わせ、BCPの内容を定期的に見直し改善することが求められます

例えば、BCPの更新・改善プロセスでは、過去の災害や緊急事態の教訓を反映させ、新しいリスクや技術の導入に備えておく必要があります。

スタッフへのフィードバックや意識向上のためのトレーニング、BCP実効性の定期的な評価など、積極的かつ継続的な改善を行いましょう。

まとめ

BCPは自然災害や感染症発生時でも事業を持続し、利用者・職員・事業自体を保護するための計画です。2024年(令和6年)4月1日から完全義務化となっているため、3月末までに策定する必要があります。

「通常業務が忙しく時間がない」「厚生労働省のガイドラインへの適合が難しい」「1人での作成に不安がある」といった方は、専門家のサポートを受けることも検討してみてはいかがでしょうか。

アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」では、事業の状況に合わせてBCPの実質的な策定をサポートし、書類作成も代行いたします。

なお、BCP策定にかかる期間はプランや状況によって異なりますが、およそ2~4カ月ほどの期間が想定されるため、運用基盤を構築するためにも、早めの準備をおすすめします。

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執筆者情報

佐藤壱磨
佐藤壱磨
事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
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