介護障害福祉事業に関する法律を理解しよう!労働基準法のポイントも解説
- 2023.08.16
大阪を中心に介護・福祉事業の起業を考えている方、すでに開業している方向けのサポートを行っている、アステージ社労士・行政書士事務所です。
介護障害福祉事業を始めたり、運営したりするためには、様々な法律が関わってきます。法律を遵守しないと罰則が科される可能性があり、注意しなければいけません。
本記事では介護障害福祉事業に関する法律の概要について、適正な運営に欠かせない労働基準法のポイントと一緒に解説します。
介護障害福祉事業に関する主な法律
介護障害福祉事業にはいくつかの法律が関連するため、内容をよく理解しておく必要があります。特に知っておきたい法律は、次の6つです。
介護保険法
障害者総合支援法
会社法
建築基準法
消防法
労働法
それぞれの詳細を、以下で見ていきましょう。
介護保険法
介護事業に関わる様々な法律の中で、根幹ともいえるものが介護保険法です。サービスを受ける側だけでなく、サービスを提供する事業者側についても、各種の規制を定めています。
介護事業を始めてから介護報酬を受け取るためには、訪問介護や通所介護(デイサービス)といった事業形態ごとに指定を受けなければいけません。
また3年ごとに法律が改正されるため、最新の内容をいち早くキャッチして、法に則ったサービス提供を心がけることが大切です。次回の改正は2024年度を予定しています。
障害者総合支援法
障害福祉事業に関するサービス詳細や給付について取り決めているのが、障害者総合支援法です。人員基準や設備に関する基準なども規定しており、事前に確認しておく必要があります。
介護保険法と同様に3年ごとに改正され、次回の改正は2024年度を予定しています。
会社法
介護障害福祉事業を始めるためには、法人格を取得する必要があります。法人格には様々な種類がありますが、株式会社・合同会社・NPO法人・一般社団法人の4種類が現実的な候補となるでしょう。
株式会社と合同会社に関わるのが、会社法です。最低資本金や株主総会、取締役会などについて規定されているため、細かく把握しておくことが求められます。
法人格については下記の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。
介護障害福祉事業所の開業には会社設立が必須!4つの主な法人格を解説
建築基準法
通所介護や有料老人ホームといった建物を利用した事業を行う場合、建築基準法が関連してきます。
たとえば、新しく建物を建てる際は、建築主事の検査に合格しなければいけません。またすでにある建物を増改築や用途変更する場合も、建築基準法に則って行う必要があります。
消防法
介護保険事業などの事業指定を受けるためには、消防法に基づく届出と確認が必要です。建築や改築した建物が消防法に引っかかり、事業指定を受けられなかったケースが実際にあります。
自動火災報知設備や消火器、スプリンクラーなどの設置が必要で、さらに市町村ごとの条例で内容を加重できる点には注意しましょう。
労働法
労働法とは労働基準法や労働安全衛生法など、労働に関する法律の総称です。
従業員の勤務時間や給与、労働環境などについて規定しており、介護障害福祉事業を適切に運営する上で遵守する必要があります。
介護障害福祉事業の運営で知っておきたい労働基準法のポイント
介護スタッフや看護師、事務員などを雇用する上で、労働基準法に基づいた適正な運営は欠かせません。
続いては、特に介護障害福祉事業の運営で知っておきたい労働基準法のポイントを紹介します。
登録型ヘルパーを労働者としてあつかう
訪問介護や居宅介護では、登録型ヘルパーがいる事業所がたくさん存在します。
登録型ヘルパーは他の従業員と同じように事業所の指示に従って働いていることから、個人事業主ではなく、労働者としてあつかいましょう。当然のことながら、労働基準法が適用されます。
移動時間も労働時間に含める
訪問介護や居宅介護では、利用者の自宅から他の利用者の自宅へ直接移動するケースが一般的です。移動時間は通勤時間と異なり、従業員が自由に使える時間ではないため、労働時間に含めます。
ただし、次の要件に該当する場合は、移動時間を労働時間に含む必要がありません。
移動時間中に業務指示に従う必要がない場合
直行直帰する場合
たとえば、最初の利用者から次の利用者までのサービス提供開始までに、1時間あったとします。利用者宅間の移動時間が20分で、残りの40分は業務指示に従う必要がない場合、労働時間に含めるのは20分のみでしょう。
また自宅から利用者宅へ直接出勤したり、利用者宅から自宅へ直接退勤したりする場合も、労働時間に該当しません。通勤時間と見なされます。
利用者都合のキャンセルは休業手当の対象となる
利用者の都合でサービスがキャンセルになるケースは、しばしばあることです。従業員に働く意思があっても他の業務を割り当てず、そのまま休んでもらった場合は未払い賃金が発生する可能性があるため、注意してください。
ケースによっては利用者都合のキャンセルが休業手当の対象となり、通常賃金の6割以上を支払わなければいけません。
参考:厚生労働省「休業手当について」
夜勤でも睡眠時間を設ける必要はない
有料老人ホームやグループホームなどの中には、16時間以上の夜勤業務を設定しているところが少なくありません。
労働基準法では労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は60分以上の休憩時間を求めています。つまり、16時間以上の夜勤では、60分以上の休憩時間があればよいといえます。休憩が取れれば問題はなく、睡眠時間をあえて設ける必要はありません。
しかし、従業員の負担を軽減して安全なサービスを提供するためには、適度な睡眠を確保できる体制づくりが重要です。独立行政法人労働安全衛生総合研究所では、長時間の夜勤では2時間の仮眠を推奨しています。
参考:独立行政法人労働安全衛生総合研究所「介護者のための安全衛生マニュアル ストレス・腰痛・働く時間を見直すポイント」
法律を遵守して介護障害福祉事業を始めるための方法
介護障害福祉事業の立ち上げには、上記のような様々な法律を遵守する必要があるため、業界未経験者や知識がない人にとっては大きな負担となるでしょう。
法律を遵守してスムーズに介護障害福祉事業を始める方法として、次のような方法が考えられます。
フランチャイズを利用する
社会保険労務士事務所へ依頼する
フランチャイズは開業に関する手続きのサポートのほか、これまでの実績に基づいた運営ノウハウを教えてもらえるのがメリットです。ただし、加盟先によっては数百万円単位の加盟金が求められ、加えて保証金やロイヤリティも求められます。また加盟先のルールや運営方法に従わなければならず、独自のサービスは展開しにくいでしょう。
社会保険労務士事務所の中には、介護障害福祉事業所の開業をサポートしているところがあります。開業に関する様々な法律に精通しており、必要な手続きをスムーズに進められるのがメリットです。
まとめ
介護障害福祉事業の立ち上げや運営には、介護保険法や障害者総合支援法を始め、様々な法律が関わってきます。不利益を被らないためにも、関連する法律の正しい理解が欠かせません。
アステージ社労士・行政書士事務所が提供している「開業応援パック」では、介護障害福祉事業所の開業に必要な会社設立や指定許可申請のほか、開業後の顧問サービスまでをカバーしています。労働基準法に即した労務相談にも対応可能です。
これから介護障害福祉事業を立ち上げる方、関連する法律でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
執筆者情報
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事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
【代表メッセージ】
「介護事業開業サポートセンター」では、これから介護・福祉事業をスタートされる方および既に開業されている方の為に必要な手続きをトータルでサポートしております。
介護・福祉事業の創業を数多くお手伝いしている実績をもとに、法人設立・指定申請などの手続き、助成金や融資、開設後の運営もご相談頂ける「身近な専門家」として、常にお客様の立場に立ったサービスを心がけ、全力でお手伝いさせて頂きます。