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訪問介護の就業規則とは?記載事項や作成手順、作成する際のポイントを解説

2024.02.21
訪問介護の就業規則とは?記載事項や作成手順、作成する際のポイントを解説

訪問介護事業所の開業時や人事制度変更時には、適切な雇用管理を行うための就業規則の作成が求められます。

就業規則には必ず記載すべき事項があり、変更の際の意見収集や周知の義務もあるため、手順やポイントを押さえた上で作成することが重要です。

この記事では、訪問介護の就業規則に関する概要、規則に含めるべき項目や作成手順、変更手続き、規則違反のリスクや具体例、策定時の重要事項について解説します。

訪問介護の就業規則とは

訪問介護の就業規則とは、事業所における職場内の取り決めをまとめた規則です。主に、雇用者と従業員間における労働条件に関する問題を、未然に防ぐ目的で作成されます。

就業規則では、最低限の基準として労働基準法などに基づく規定を守りつつ、事業所独自の規則を記載する必要があります。

労働基準法における就業規則

労働基準法の第九章「就業規則」の内容を、以下に要約しました。

  • 第八十九条(作成及び届出の義務):常時10人以上の労働者を雇用する事業者は、就業規則を作成・変更し、行政官庁に届け出る義務がある
  • 第九十条(作成の手続):使用者は就業規則の策定や変更時に、労働組合があればその意見を、なければ労働者の過半数を代表する者の意見を聴取しなければならない
  • 第九十一条(制裁規定の制限):就業規則での減給規定は、一回の額が平均日給の半額を超えず、総額が一賃金支払期の総賃金の十分の一を超えてはならない
  • 第九十二条(法令及び労働協約との関係):就業規則は法令や適用される労働協約に反してはならず、行政官庁は牴触する場合に変更を命ずることができる
  • 第九十三条(労働契約との関係):労働契約と就業規則との関係については、労働契約法第十二条に従うものとする
  • 第百六条(法令等の周知義務):使用者は法令や命令、決議を、厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない

出典:労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)|厚生労働省

就業規則は労働基準法を遵守した上で作成する必要があるため、法令に基づく最低基準を下回る規定は無効とされます

例えば、就業規則に「有給休暇を与えない」と記載した場合であっても、労働基準法に即していないことから、この規則によって有給休暇を与える義務が免除されることはありません。

訪問介護の就業規則で定める内容

訪問介護の就業規則には、下記3つの内容を記載する必要があります。

  • 絶対的記載事項
  • 相対的記載事項
  • 任意的記載事項:労働条件に直接関係のない会社の理念など

ここでは、それぞれの項目について解説します。

絶対的記載事項

就業規則の絶対的記載事項とは、必ず記載しなければならない重要な事項であり、次のような内容が含まれます。

【労働時間・休憩時間関係】

  • 始業・終業の時刻
  • 休憩時間の長さ、時刻、与え方
  • 休日の日数と与える日
  • 休暇に関する事項(年次有給休暇、特別休暇など)
  • 就業時転換に関する事項

【賃金関係】

  • 賃金の決定、計算・支払いの方法と基準
  • 賃金の締切り・支払いの時期
  • 昇給に関する事項(昇給時期、昇給率など)

【退職関係】

  • 退職に関する事項(手続、定年制、契約期間終了後の退職、解雇の事由など)

これらの絶対的記載事項を定めることで、労働者と雇用主の関係が明確に規定され、労働環境の適切な整備につながります。

相対的記載事項

相対的記載事項は、定める場合には記載しなければならない事項です。事業場で実施されている制度に基づくものであり、具体的には次のような内容があげられます。

【退職手当関係】

  • 適用範囲
  • 金額の決定・計算方法
  • 支払方法と時期

【臨時の賃金関係】

  • 臨時の賃金に関する事項
  • 最低賃金額

【従業員への負担金関係】

  • 食費、作業用品などの負担に関する事項

【安全・衛生関係】

  • 安全・衛生に関する事項

【職業訓練関係】

  • 職業訓練に関する事項

【災害補償・業務外の傷病扶助関係】

  • 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項

【表彰・制裁関係】

  • 表彰に関する基準や手続き
  • 制裁に関する基準や手続き

【その他】

  • 事業場の全従業員に適用される定めに関する事項

訪問介護の就業規則の相対的記載事項では、事業場で実施されている各種制度に基づき、適用範囲や金額の決定方法、支払い時期などを規定します。

任意的記載事項

任意記載事項は従業員の労働条件には直接関係しないものであり、就業規則に記載するかどうかが自由な項目です。

以下は、任意記載事項の一例です。

  • 就業規則の目的、会社の理念
  • 採用に関する事項
  • 施設の管理に関する事項
  • 事業場の秩序維持に関する事項
  • 就業規則の改正手続に関する事項 など

ただし、規定の仕方によっては相対的必要記載事項に該当する場合もあるため、就業規則作成の際には慎重な検討が必要です。

訪問介護の就業規則の作成手順

訪問介護の就業規則を作成する際には、次のような手順で進めることで、スムーズな作成が可能になります。

  1. 就業規則案の作成
  2. 従業員代表の意見収集
  3. 従業員代表の意見を考慮し検討
  4. 労働基準監督署へ届出書を提出(従業員代表の意見書を添付)
  5. 従業員への周知

各手順を見ていきましょう。

1. 就業規則案の作成

はじめに、基礎となる就業規則案を作成します。就業規則案は法令遵守を念頭に置いた上で、訪問介護事業所の独自のニーズや特異性を考慮した内容にする必要があります

具体的には、次の流れで作成すると進めやすいでしょう。

  1. 現行の労働条件や職場の規律などをリスト化する
  2. リストから就業規則に掲載すべき項目を抽出する
  3. 労働条件や職場規律などの具体的な内容を詳細に検討する
  4. 各項目を章ごとに整理し、条文化する
  5. 条文ごとに見出しを設定する

既存の労働条件や規律に基づき具体的な内容を検討し、整理された項目を章ごとにまとめ、条文として具体化していきます。

なお、就業規則案作成の際には、既存の規則や同業界の事例も参考にしながら進めることもおすすめです。

介護・福祉事業における就業規則の事例については、アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」へお問い合わせください。

2. 従業員代表の意見収集

次に、従業員代表を選定し、就業規則案に対する意見を収集します。従業員の立場や課題を理解し、コミュニケーションを通じて協力体制を築くことで、より適切で実効性のある規則を作成できます。

3. 従業員代表の意見を考慮し検討

収集した従業員代表の意見は真摯に検討し、可能な範囲で取り入れましょう。労使双方の意見を反映した内容を目指すことで、就業規則の透明性と公正性の確保につながります

4. 労働基準監督署へ届出書を提出(従業員代表の意見書を添付)

就業規則案の検討を行った後は、労働基準監督署への提出が必要です。この時、従業員代表の意見書を添付することと、法的要件に適合していることが求められます。

5. 従業員への周知

作成した就業規則は、全従業員に周知しなければなりません。適切な周知方法で、従業員が規則を理解しやすい形で提供することが重要です。

訪問介護の就業規則を変更する場合の手続き

就業規則に記載されている事項に変更が生じた際は、規則を改訂する必要があります。

就業規則を変更する場合は、作成時と同様に従業員の意見を求め、その後届け出を行い、変更内容を従業員への周知を行いましょう。

就業規則の見直し・改善を行うべきタイミング

就業規則に掲載されている事項は、訪問介護事業所の現状に即したものでなければなりません。そのため、次のような状況では、就業規則の見直し・改善を検討すると良いでしょう。

  • 新しい制度や手当を導入した場合
  • 所定労働時間を変更した場合
  • 法令が改正されたタイミング
  • 正社員とパートタイマーの就業規則を区別したい時
  • 賃金や慶弔見舞金を別の規程にする内容を変更したい場合 など

就業規則の見直し・改善を適切に実施することで、従業員と事業者の双方が納得できる労働環境の維持や、法令遵守の確保に寄与します。

訪問介護の就業規則で労働基準法に違反するリスク・違反例

訪問介護事業所としての許可を受けた使用者が労働基準法に違反した場合、行政による許可取り消しのリスクがあります。(労働基準法 第七十三条)

また、裁判所は、労働基準法の特定規定に違反した使用者や賃金未払いの使用者に対し、未払金と同額の付加金支払いを命じることができるとしています。(労働基準法 第百十四条)

ほかにも、第五条「強制労働の禁止」の規定に違反した者は、懲役1年以上10年以下または罰金20万円以上300万円以下の刑罰が科される可能性があります。(労働基準法 第百十七条)

違反例として、次のような例があげられます。

  • 時間外・休日労働規定を適切に履行していない
  • 従業員のための適切な健康診断を規定していない、または実施していない
  • 労働基準法に適合しない残業単価の設定 など

労働基準法に違反すると、罰金や介護保険サービス指定の取消しの対象となる恐れがあるため、就業規則の慎重な策定と実施、定期的なチェックを行いましょう

訪問介護の就業規則を作成する際のポイント

訪問介護事業所で適切な就業規則を作成するためには、次の3つのポイントを意識すると良いでしょう。

  • ひな形をそのまま使用せず、実際の事業状況に基づき作成する
  • 介護職員処遇改善加算を反映した内容にする
  • 人事労務管理の専門家に相談する

ひな形をそのまま使用せず、実際の事業状況に基づき作成する

訪問介護の事業内容は多岐にわたり、通常の企業とは異なる業務や労働条件が発生するケースがあります。訪問介護の就業規則を作成する場合は、事業所の実際の状況や特有のニーズに合わせて作成することがポイントです。

就業規則のひな形やテンプレートを活用する場合は、あくまでも参考程度にし、職種や勤務体系、特殊な業務に関する内容は、事業所に即した具体的な規定を盛り込むよう心がけましょう。

介護職員処遇改善加算を反映した内容にする

介護職員処遇改善加算とは、介護サービスの質向上や働く環境の改善を目的として導入された制度です。

同制度の内容を反映した就業規則を作成し、処遇改善加算のポイントや具体的な手続き、給与への影響などを明確に規定することで、従業員にとって公平で理解しやすい労働環境の整備につながります

関連記事:処遇改善加算を取得したい方へ

人事労務管理の専門家に相談する

訪問介事業における就業規則は、助成金をもらうことを意識して作成する必要があります。

しかし、訪問介護事業における労働環境や法的要件は複雑なものであり、適切な就業規則の策定には専門的な知識が求められます。

また、規則への規定の仕方や、記載するタイミングによって助成金がもらえたりもらえない場合があるので注意が必要です。特に、最近改正のあったキャリアアップ助成金正社員転換制度においては、就業規則を細かくみられています。

よって、事業所内での作成が不安な場合には、助成金と就業規則の専門家である社労士に頼んだ方が良いでしょう。定期的に相談を行えば、就業規則に関する変化する法令や規制にも柔軟に対応してもらえます。

アステージ社労士・行政書士事務所では、介護・福祉事業を展開する企業様に対し、事業規模や業態、施設数、職種数などを十分に考慮した、専門的かつカスタマイズされた就業規則を提供しております

事業の実情に即した就業規則の作成に関するサポートが必要な場合は、お気軽にご相談ください。

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まとめ

本記事では、訪問介護の就業規則の作成手順やポイントについて解説しました。

訪問介護事業者は、適切な雇用管理を確保するために、事業所の開業時やその後の人事制度変更時に就業規則を策定する必要があります。

訪問介護の就業規則には、必ず記載すべき事項があり、変更の際には意見聴取や周知の義務が生じます。

訪問介護の就業規則に関する専門的なサポートが必要な場合には、アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」がご支援いたします

事業所ごとの特性に合わせた就業規則の作成・運用をサポートするため、訪問介護の開業時や就業規則の変更時には、ぜひご活用ください。

執筆者情報

佐藤壱磨
佐藤壱磨
事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
【代表メッセージ】
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