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訪問看護で就業規則は必要?記載事項・作成ポイント・作成例を解説

2023.12.18
訪問看護で就業規則は必要?記載事項・作成ポイント・作成例を解説

訪問看護事業において、職場の健全な運営や従業員の権利保護を実現するためには、就業規則の作成が有用です。

就業規則は事業者・労働者の両者にとって重要な文書であり、事業主は記載する内容や周知・変更方法について理解しておく必要があります。

本記事では、訪問看護の就業規則の概要や必要性、記載事項、作成する際のポイント・注意点について解説します。

訪問看護の就業規則とは

訪問看護の就業規則とは、訪問看護ステーションなどの事業所における就業に関する規則です。

訪問看護では、正社員・臨時職員・契約社員など異なる職種や雇用形態があり、雇用形態や働き方にかかわらず、事業者と従業員は労働契約に基づき労働基準法が適用されます。

事業者は就業規則を定め、訪問看護サービス特有の雇用条件に合わせて、適切な雇用管理を行う必要があります。

ここでは就業規則の基礎と、就業規則の作成義務がある企業の条件について解説します。

そもそも就業規則とは

就業規則は、労働者の給与や勤務時間などの労働条件や、職場の規律に関する内容をまとめて文書化したものです。

職場内のルールを確立し、雇用主と従業員の双方がこれを守ることで、従業員は安心して仕事に従事でき、両者間でのトラブルを未然に防ぐことにつながります。

就業規則の作成・変更には、労働基準法の規定が適用されます。規則は法令や労働協約に適合している必要があり、これに反する場合は行政官庁より変更を命じられるケースもあります。

出典:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省

就業規則の作成義務の対象者(労働基準法第89条)

就業規則の作成義務は、すべての事業者に適用されるわけではなく、一定の条件にあてはまる事業者が対象になります。

労働基準法の「第九章 就業規則(作成及び届出の義務)」では、以下のように定められています。

第八十九条
常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

引用:労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)|厚生労働省

10人以上の従業員を常時雇用する企業および個人事業主に、作成義務があるといえます。

また、次のような就業に関する事項を変更した場合も、作成・届け出を行うよう義務付けられています。

  • 勤務時間や休暇に関する事項
  • 賃金の決定・支払い方法、昇給に関する事項
  • 退職に関する事項および退職手当の定め
  • 臨時の賃金や最低賃金の定め
  • 労働者の負担事項
  • 安全・衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償と傷病扶助に関する事項
  • 表彰と制裁に関する事項
  • その他、全労働者に適用される事項

訪問看護で就業規則を定める必要性

一般的に、管理者が就業規則を定める理由として以下のような内容があげられます。

  • 法令遵守のため
  • 労働環境を整備するため
  • 従業員へのサポート

就業規則は法律や規制に基づき作成されるため、管理者が法的要件を理解した上で法令遵守の基盤を確保することで、法的リスクを軽減できます。

就業規則の適切な運用によって労働環境が整備され、従業員との円滑な関係構築にもつながります。

また、就業規則を適切に策定することは、労働者の権利や福利厚生に関する適切な情報提供やアドバイスをする際にも役立ちます。

これらの一般的な内容に加え、次のような訪問看護特有の理由もあります

  • 一貫性と公平性を確保するため
  • 利用者宅で単独で業務にあたる際の行動指針とするため

訪問看護など福祉・介護事業では中途採用も多く、多様な経歴のスタッフが在籍することもあります。このような中では、労働環境の公平性を確保し、対立や不満を軽減する取り組みが不可欠です。

また実際の訪問看護の現場では、利用者宅でスタッフが単独で業務にあたるケースも多く見られます。その際の行動指針を定めておくことで、適切なサービス提供やサービス品質の安定にもつながります。

訪問看護の就業規則に記載する内容

訪問看護の就業規則には、どのような内容を盛り込むべきなのでしょうか。

ここでは、就業規則に記載する内容について、一般的な就業規則と訪問看護特有の記載事項に分けてご紹介します。

一般的な就業規則の記載事項

就業規則には、労働基準法第89条に基づいて必ず含むべき「絶対的必要記載事項」と、各事業場が独自に定める「相対的必要記載事項」があります。

それぞれの内容は、以下の通りです。

【絶対的必要記載事項】

  1. 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、および交替制度に関する事項
  2. 賃金の決定・計算・支払方法、締切、支払時期、昇給に関する事項
  3. 退職に関する事項(解雇事由を含む)

【相対的必要記載事項】

  1. 退職手当に関する事項
  2. 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  3. 食費、作業用品などの負担に関する事項
  4. 安全衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰、制裁に関する事項
  8. その他全労働者に適用される事項

絶対的必要記載事項には、就業時間や休日休暇、賃金、退職に関する内容を含める必要があります。相対的必要記載事項は、各事業所で規定がある場合に記載が必要です。

出典:1 就業規則に記載する事項 2 就業規則の効力|厚生労働省

訪問看護に求められる規定やルール

一般的な就業規則の記載事項に加え、訪問看護の職場環境にあわせた規定やルール作りも求められます

具体的には、次のような内容が想定されます。

【勤務体制と手当に関する規定】

  • 営業日(土日の営業)
  • 変形労働時間制
  • 緊急訪問や電話当番の手当 など

【教育・研修に関する規定】

  • 訪問時のケア技術や知識に関する研修
  • 実務スキルや知識の習得
  • 主体性と協働への理解と実行能力の向上 など

【コミュニケーションと業務報告に関する規定】

  • 業務報告の励行と情報共有
  • 定期的な会議の開催と無駄な会議の排除
  • 職場環境の整備と意見の収集 など

【業務に取組む姿勢に関する規定】

  • 責任の範囲と権限の明確化
  • 必要な能力と資格の要件の明示
  • 明確な指示出しと業務の効率的遂行 など

【安全衛生・危険の防止に関する規定】

  • 感染防止対策や医療廃棄物の管理
  • 夜間訪問時の交通手段と防犯対策 など

【情報管理に関する規定

  • 個人情報の保護と情報取扱基準の確立
  • 文書持ち出しに関するルールの設定
  • 職員への情報管理教育 など

訪問看護事業では、24時間連絡体制の構築や勤務体制の整備、手当の検討が必要です。そのほか、教育や研修、コミュニケーション方法、業務への取り組み姿勢、安全衛生、情報管理、経営・運営に関する規定やルールも定めておくことが推奨されます。

訪問看護の就業規則を作成する際のポイント

訪問看護の就業規則を作成する際には、以下の4つのポイントを押さえると良いでしょう。

  • 適用範囲を明確にする
  • 従業員への周知方法も決めておく
  • モデル就業規則(厚生労働省配布)を参考に作成する
  • 就業規則の専門家である「社会保険労務士」への相談も検討する

一つずつ解説します。

適用範囲を明確にする

まずは、就業規則の対象となる範囲を、異なる職種や雇用形態に応じて正確かつ明確に定義することです。

訪問看護の特有の業務や、正社員・契約社員・パートタイマー・アルバイトなど雇用形態に基づき、規則が適用される範囲を記載することで、組織内の運営や業務の透明性を確保できます。

従業員への周知方法も決めておく

作成した就業規則は、従業員へ適切な周知方法で知らせる必要があります。

労働基準法「第百六条 法令等の周知義務」では、「就業規則は、各作業所の見やすい場所への掲示、備え付け、書面の交付などによって労働者に周知しなければならない」といった内容が記されています。

周知徹底されなければ、規則の効力を十分に発揮することが難しいため、就業規則の内容や変更点を従業員に伝える方法も確立しておきましょう。

定期的なミーティングや文書での通知など、周知手段を具体的に定めることがポイントです。

モデル就業規則(厚生労働省配布)を参考に作成する

就業規則をゼロから作成するのは、骨の折れる作業です。はじめて作成する場合は、厚生労働省が提供しているモデル就業規則を参考に作成することも一つの方法です。

ただし、労働者にとって有利な記載となっている点も多いため、テンプレートはあくまでもベースとして使用し、事業独自の要件に合わせて調整することが重要です。

就業規則の専門家である「社会保険労務士」への相談も検討する

就業規則の作成には、法的な専門知識が求められます。特定の規定内容により、「誤解が生じる可能性」や「規定を回避しようとする人が現れる可能性」も考慮しなければなりません

訪問看護の就業規則作成に関する疑問や不安がある場合は、労働・社会保険の専門家である「社会保険労務士」に相談することも検討すると良いでしょう。就業規則の作成は、社労士だけに認められた独占業務です。

専門家のアドバイスや指導を受けながら就業規則の作成・改定を行うことで、スムーズかつ安全な運用を実現しやすくなります。

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訪問看護の就業規則の作成例

訪問看護の就業規則の作成例を、一部ご紹介します。

【絶対的記載事項の作成例】

時間外労働、休日労働、深夜労働

第〇条 (時間外労働、休日労働、深夜労働)
当事業所では、正社員に対して業務の都合により、所定労働時間を超え、または所定休日に労働させることが発生する可能性があります。

非常緊急時の勤務

第〇条 (非常緊急時の勤務)
災害その他避けることのできない事由により、または業務の遂行上やむを得ない場合は、全員または必要な正社員を時間外または休日に勤務させることがあります。

休日の振替

第〇条 (休日の振替)
業務上の必要がある場合は、前述の規定にかかわらず、休日を他の労働日に振り替えることが認められます。休日の振替を行う際は、事前に振替後の休日を指定して正社員に通知します。

【相対的記載事項の作成例】

退職金

第〇条 (退職金)
正社員には、一定の条件下で退職金が支給される制度が適用されます。

安全衛生上の就業禁止

第〇条 (安全衛生上の就業禁止)
1. 伝染の危険性のある疾病に罹患している者や、他者に危害を及ぼす可能性のある者など、医師が就業不適当と認定した場合は、就業が禁止されます。
2.正社員が同居の家族や同居人が感染症にかかり、あるいは疑わしい症状がある場合は、直ちに●●に届け出て、必要な指示に従う必要があります。
3.第1項の就業禁止期間は原則、無給とされます。

詳しい内容や作成に関するサポートが必要な場合は、アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」へご相談ください

訪問看護の就業規則を運用する際の注意点

就業規則の策定後には、効果的な運用が求められます。

ここでは、訪問看護の就業規則を運用する際の、2つの注意点について解説します。

就業規則を変更する際には労働者の意見を聞く必要がある

就業規則は事業者が一方的に定めるのではなく、作成・変更時には以下の法律に基づき、労働者の意見を聞く必要があります

(作成の手続)
第九十条 使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない
② 使用者は、前条の規定により届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付しなければならない。

引用:労働基準法(◆昭和22年04月07日法律第49号)|厚生労働省

就業規則を変更する際には、変更による影響を労働者へ説明し、意見を求めることが義務づけられています。

変更が避けられない場合でも、その理由や背景をわかりやすく説明し、フィードバックを受け入れる体制作りが必要です。

定期的な見直しが大切

就業規則は、法令や社会環境の変化に対応していかなければなりません。定期的な見直しを行うことで新しい法令の遵守ができ、企業に求められる社会的取り組みへ応える形で、就業規則を適切にアップデートできます

就業規則を見直すべきタイミングは、例えば次のような時です。

  • 人事制度や給与制度の変更
  • 労働基準法の改正
  • 正社員とパートタイマーの規則の分離
  • 賃金や慶弔見舞金の別規定 など

定期的な就業規則の見直し・更新を行い、変化への適応力を高めることが大切です。

まとめ

訪問看護事業の運営では、労働基準法に基づき就業規則の作成が求められます。

訪問看護特有の規定やルールの必要性を理解したうえで、適切な作成・運用に努めましょう。

就業規則に関する専門的なサポートが必要な場合は、介護分野に強いアステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」へご相談ください

事業所ごとの特性にあわせた就業規則の作成・運用をサポートいたします。

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執筆者情報

佐藤壱磨
佐藤壱磨
事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
【代表メッセージ】
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