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訪問看護の運営基準とは?運営基準の一覧表と内容、指導事例を紹介

2023.11.14
訪問看護の運営基準とは?運営基準の一覧表と内容、指導事例を紹介

訪問看護事業を開業・運営するためには、「人員基準・設備基準・運営基準」の3つの指定基準を満たす必要があります。

なかでも、運営基準はサービス提供と事業所の適切な機能を規定したものであり、多くの項目を含みます。違反すると実地指導等の際に指導を受ける可能性もあるため、内容の理解と遵守に努めることが大切です。

本記事では、訪問看護の運営基準の概要と、介護保険法における訪問看護の運営基準一覧・内容、実際の指導事例について解説します。

訪問看護の運営基準とは

訪問看護の運営基準とは、訪問看護事業の開業・運営に必要な指定基準(設置基準)のうちの一つです。

介護保険法および健康保険法に基づき、厚生労働省では「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」を定めています。

指定基準には「人員基準・設備基準・運営基準」が含まれ、これらを満たした上で、サービス形態に応じた指定を受けなければなりません

具体的には、訪問看護ステーションの場合は、介護保険法に基づく都道府県知事または指定都市・中核市市長による指定を受ける必要があります。

人員基準や設備基準については、こちらもあわせてご覧ください。

関連記事:訪問看護の常勤換算とは?立ち上げに必要な人員や常勤換算の計算方法を解説

訪問看護サービスの種類ごとの運営基準の違い

訪問看護サービスの種類は、大きく「訪問看護ステーション」と「みなし指定」の2つに区分できます。

訪問看護ステーションは介護保険法に基づき、看護師または保健師が管理者となって運営する事業所です。みなし指定は先述の通り、病院や診療所が訪問看護サービスを提供する形態を指します。

両者は人員配置基準や設備基準に違いはあるものの、運営基準に大きな違いはありません

出典:訪問看護|厚生労働省

介護保険法における訪問看護の運営基準一覧・内容

訪問看護の運営基準は、厚生労働省が定める「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」の第四章「運営に関する基準」にて、第5条から第31条に記載されています。

  1. 内容及び手続の説明及び同意
  2. 提供拒否の禁止
  3. 提供困難時の対応
  4. 受給資格の確認
  5. 心身の状況等の把握
  6. 保健医療サービス及び福祉サービス提供者との連携
  7. 身分を証する書類の携行
  8. 利用料
  9. 指定訪問看護の基本取扱方針及び具体的取扱方針
  10. 主治医との関係
  11. 訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成
  12. 利用者に関する全国健康保険協会、後期高齢者医療広域連合又は健康保険組合への通知
  13. 緊急時の対応
  14. 管理者の責務
  15. 運営規程
  16. 勤務体制の確保等
  17. 衛生管理等
  18. 掲示
  19. 秘密保持
  20. 広告
  21. 苦情処理
  22. 事故発生時の対応
  23. 会計の区分
  24. 記録の整備
  25. 事業報告

出典:指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について|厚生労働省

各項目の概要を確認していきましょう。

内容及び手続の説明及び同意

基準第5条では、指定訪問看護を受ける利用者に対し、提供の開始前に運営規程の概要やスタッフ配置等の重要事項を記載した文書を提供することと、説明によって同意を得ることを規定しています。

同意は双方の保護のため、書面で確認することが望ましいとされています。

提供拒否の禁止

基準第6条では、原則として利用申し込みに対して断ることは禁止されており、利用者が深刻な療養が必要であるからといって、サービス提供を拒否することはできないものと規定しています。

提供困難時の対応

基準第7条は第6条の例外として、下記を示したものです。

  • 利用者の状態が深刻で、訪問看護ステーションでの対応が難しい場合
  • 利用者の居住地と看護ステーションの距離が遠い場合
  • 看護ステーションのスタッフが対応できない場合

これらの状況のように、適切な訪問看護が難しいと認められる場合は除外事由として認めています

ただし、例外にあたる場合であっても、速やかに主治医に連絡し、適切な別の訪問看護サービスを提供できるよう必要な手続きを講じなければならないとしています。

受給資格の確認

基準第8条では、訪問看護事業者は利用者の受給資格を確認するために、被保険者証等の提示を求め、確認するべきと定められています。

重複支給を防ぐためには、利用者への問い合わせや訪問時の確認が求められます。ただし、すでに確認済みの場合は除外するものとされています。

また、利用者が介護保険法に基づく居宅サービスを受け、居宅介護サービス費の支給を受けられる場合は、訪問看護療養費の支給は行われないことになります。そのため、訪問看護事業者は利用者が要介護者であるかを確認する必要があります。

心身の状況等の把握

基準第9条では、適切な訪問看護を提供するために、利用者の医療履歴・病状・介護状況・家庭環境の把握が必要であると定めています。これらの情報は、訪問看護記録書に記録の上、基準第30条に基づき保存することが求められます。

保健医療サービス及び福祉サービス提供者との連携

基準第10条の第1項では、訪問看護事業が地域社会に密着したサービスであることから、市町村等、他の保健・医療・介護・福祉サービス提供者との連携が必要であることを定めています。

連携の際には、他のサービス内容の確認や、地域ケア会議や在宅介護支援センターの積極的活用が推奨されています。

基準第10条の第2項では、訪問看護提供終了時に利用者やその家族に適切な指導を行うほか、提供終了後も必要なサービスが継続されるよう、終了後の主治医への情報提供や市町村の保健・福祉サービス提供者と連携することを規定しています。この場合、地域ケア会議や在宅介護支援センターとの連携を重視するものとしています。

身分を証する書類の携行

基準第11条では、利用者の安心を保つ目的で、訪問看護ステーションの看護師等は身分証明や名札を携行し、初回訪問時や利用者や家族の要請時に提示するよう指導することが求められています。この証書には、ステーション名・看護師の氏名・写真・職種が記載されることが望ましいとされています。

利用料

基準第13条の利用料については、基本利用料は訪問看護療養費の算定方法に基づき、支給された金額から相当額を控除した金額で算出されるものと規定しています。

その他の利用料については、特別料金が厚生労働大臣によって定められた指定訪問看護に限り、利用者の選定に基づき徴収しなければなりません。これらの利用料は、各訪問看護ステーションが提供にかかる費用範囲内で設定されます。

また、提供前に利用者や家族に内容と金額について説明し、同意を得るべきであり、支払いの際には明細が記載された領収書を提供する必要があるとも規定しています。

指定訪問看護の基本取扱方針及び具体的取扱方針

基準第14条および15条では、指定訪問看護の取扱方針について定めています。

具体的には、指定訪問看護は利用者の心身特性を考慮し、個別の療養生活を充実させるために、主治医との連携に基づいて看護目標や訪問看護計画を実施することとあります。

また、効果に基づき訪問看護計画の改善を行うことや、利用者および家族に対してわかりやすく指導・説明すること、新しい技術の習得に努めること、一般に認められていない看護は行わないことと記されています。

主治医との関係

基準第16条では、指定訪問看護ステーションの管理者は、主治医の指示に基づき看護が行われるよう監督や連絡調整を行うことが求められています。

主治医以外からの指示書は、複数受け取れないものとし、利用者の主治医が指定訪問看護の必要性を認めた場合に限り、訪問看護の指示書の交付を受けると規定しています。

訪問看護計画書及び訪問看護報告書の作成

基準第17条では、看護師等は利用者ごとに訪問看護計画書と訪問看護報告書を作成し、これには利用者の希望や状況、主治医の指示に基づく看護目標や具体的なサービス内容を記載するものと記されています。

なお、理学療法士等が訪問看護を行う場合は、訪問看護計画書及び訪問看護報告書に、それらの内容を含むよう看護職員と連携し、作成する必要があります。

利用者に関する全国健康保険協会、後期高齢者医療広域連合又は健康保険組合への通知

基準第18条は、利用者に対する訪問看護療養費、または家族訪問看護療養費の支給が不適当である場合に、その理由を述べて上記の機関に通知しなければならないことを定めた内容です。

緊急時の対応

基準第19条では、指定訪問看護を提供中に利用者の病状に急変等が生じた場合には、運営規程に基づき、速やかに主治医に連絡し指示を求め、必要な手当や措置を行わなければならないとしています。

管理者の責務

基準第20条では、管理者は指定訪問看護の利用の調整と業務の管理を行い、適切な指定訪問看護を提供できるように指揮命令を行う責務があると示しています。

運営規程

基準第21条の運営規程では、指定訪問看護ステーションごとに、指定訪問看護の適正な運営と利用者への適切な提供を確保するための規程を定めることが義務づけられています。

勤務体制の確保等

基準第22条では、職員の勤務体制と職務内容について定めており、指定訪問看護は雇用する看護師等により提供され、第三者への委託は認めないことを規定しています。

衛生管理等

基準第23条では、管理者は看護師等の清潔と健康状態の管理、設備や備品の衛生的な管理に努め、感染の予防対策を講じる責務があるとしています。

掲示

基準第24条は、指定訪問看護ステーション内に、運営規程の概要や職員の勤務体制等利用者に役立つ情報を掲示し、周知する責務があることについて示しています。

秘密保持

基準第25条では、指定訪問看護の業務において、利用者やその家族の秘密を漏らしてはならないことと、訪問看護情報提供療養費に関する市町村への情報提供に際しては、本人やその家族の同意が必要であることを定めています。

これには、過去に従業者だった者が知り得た利用者や家族の秘密を漏らさないよう、必要な措置を取ることが求められます。

指定訪問看護事業者は、従業者が雇用終了後も秘密を保持するよう、取り決めや違約金の定め等の措置を講じる必要があります。

広告

基準第26条の広告に関する項目では、指定訪問看護事業を地域に開かれた支援事業として、必要事項を広告として掲載できるものとしています。

必要事項には、事業者やステーションの名称・連絡先・勤務看護師の情報・サービス内容・営業時間等が含まれ、広告内容には虚偽があってはならないと定めています。

苦情処理

基準第27条では、苦情処理のための相談窓口や手段を提供し、利用者へ説明する文書に苦情処理の概要を記載し、指定訪問看護ステーションに掲示することが求められています。

事故発生時の対応

基準第28条は事故発生時の対応について定めたものであり、指定訪問看護事業者は、利用者に対する訪問看護による事故が発生した場合、連絡した上で必要に応じて損害賠償を迅速に行うべきとしています。

事故発生時の対応方法はあらかじめ定めておくことが望ましく、損害賠償のために損害賠償保険への加入や賠償資力を有することが推奨されています。

会計の区分

基準第29条では、指定訪問看護事業者は訪問看護ステーションごとに経理を区分し、指定訪問看護の会計と他の事業の会計を分けなければならないものと定められています。

なお、具体的な会計処理の方法については、「指定老人訪問看護の事業及び指定訪問看護の事業の会計・経理準則の制定について」によるものとしています。

記録の整備

基準第30条では、指定訪問看護事業者は日々の事業運営や利用者への提供に関する事項を記録し、2年間保存するべきと記載があります。また、各都道府県の条例では保存期間を5年と定めているところが多いです。

事業報告

基準第31条では、指定訪問看護ステーションの管理者は指定訪問看護事業に関して報告を行うべきとされ、具体的な報告方法は別途通知されるものと記されています。

訪問看護の運営基準に関する実地指導の指導事例

訪問看護の運営指導(実地指導)とは、都道府県等の指定権者が、事業所を訪問して法令順守を確認するものです。利用者の自立支援とサービス質の確保を目的に、指定の有効期間中に最低1回実施されます。

実地指導の際に、運営基準に関する指導が行われた事例もあるため、基準を順守するためにも参考にしてみてください。

訪問介護費に関する指導事例

広島市が公開している「令和3年度実地指導の指摘事項等について」の資料より、訪問介護費に関する指導事例をご紹介します。

訪問介護費 に関する指導事例として、以下のような内容が掲載されていました。

  • 記録上の訪問介護内容と実際の請求に相違があり、所要時間の合算や条件不一致により訪問介護費を請求
  • 記録の内容や指示書不足、緊急時訪問が少ないにも関わらず特別加算を請求
  • 准看護師が行った診療を看護師のものとして算定し訪問看護費を求めた

このような指導を受けないためには、次のポイントを押さえると良いでしょう。

・提供したサービスと請求内容の整合性を確認し、記録の正確性を保つこと
・特別加算や緊急時訪問の要件を満たすよう、適切な記録と条件を整えること
・従業者の役割や指示書の必要性について、明確なガイドラインを遵守すること

これらのポイントを遵守することで、サービス提供の正確性や合法性の確保につながると考えられます。

訪問看護計画書および訪問看護報告書に関する指導事例

同資料では、訪問看護計画書・報告書に関する指導事例も多く見られました。

  • 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提供した訪問看護について、看護職員と連携して計画書や報告書を作成し、連携の記録を残すこと
  • 訪問看護計画書と報告書を主治医に定期的に提出すること
  • 指定訪問看護初回の訪問で、新規の訪問看護計画を作成していない事例が認められた

指導を受けないためのポイントとして、以下があげられます。

・専門職と看護職の連携を確保し、作成した文書や連携内容を記録に残すこと
・主治医への計画書提出を定期的に行うこと
・新規訪問時は適切な計画書を必ず作成すること

    現場でのマニュアル作成やルールの徹底を行い、運営基準の順守に努めましょう。

    まとめ

    訪問看護事業の開業・運営では、人員基準・設備基準・運営基準の指定基準を満たす必要があり、特に運営基準は多くの項目を含み、複雑な内容となっています。

    違反すると指定権者からの指導を受ける恐れもあるため、内容を理解した上で遵守するための仕組み作りを進めることが大切です。

    訪問看護事業の成功を目指すためには、訪問看護事業の開業に精通した専門家のアドバイスやサポートを受けることがおすすめです

    アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」では、訪問看護事業の開業・運営をトータルサポートしております。開業申請代行や就業規則の策定、各種手続きや給与計算の代行も承っておりますので、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

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    執筆者情報

    佐藤壱磨
    佐藤壱磨
    事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
    所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
    【代表メッセージ】
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