訪問看護の事業計画書に記載する項目や書き方・注意点をわかりやすく解説
- 2023.11.10
訪問看護など事業を開始する際には、事業計画書の作成が不可欠です。事業計画書を用意しておくことで、ビジネスの方向性や戦略を明確にできるほか、創業時の資金調達の場面でも役立ちます。
一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、令和4年度の訪問看護ステーションの稼働数は14,304軒、そのうち新規開業が1,806軒、廃止数は490軒となっています。
訪問看護分野では、新規開業が多い一方で廃止数も多く、安定した運営には計画的に事業を展開することが重要であり、そのために事業計画書の策定が有用です。
この記事では、訪問看護事業の立ち上げに必要な事業計画書に記載する項目や書き方、注意点について解説します。
訪問看護で事業計画書を作成する目的
訪問看護サービスの開業の際に事業計画書を作成する目的は、主に以下の3つがあげられます。
- 事業の見通しを立てるため
- 金融機関・金融公庫から融資を受ける際に提出する必要があるため
- 指定申請書をスムーズに作成するため
それぞれ解説します。
事業の見通しを立てるため
事業計画書作成の第一の目的は、事業の見通しを立てることです。事業計画書には、事業内容・収支見込み・必要資金・返済計画などの内容が含まれます。
経営者として安定した経営によって利益を創出し、事業を継続させるためには、事業展望や期待できる利益を可視化しておく必要があるでしょう。
開業前に具体的な収支・資金詳細を算出し、事業が成立するかどうかを確認しておくことで、確実性の高い事業の見通しが可能になります。
金融機関・金融公庫から融資を受ける際に提出する必要があるため
訪問看護事業の開業にあたり、金融機関からの借入や日本政策金融公庫からの融資を検討している方もいらっしゃるでしょう。融資を希望する際に、申請先から提出が求められる書類の一つが、事業計画書です。
金融機関・金融公庫では返済可能性が重視され、貸し倒れを避けるため事業計画書を参考に融資の可否を判断します。
また、事業計画書のほかに、返済見込みを詳細に示す「収支計画書」の提出が求められる場合もあります。収支計画書の記載事項は、主に営業日数・売上金額・経費詳細などです。
関連記事:訪問看護の開業・立ち上げに必要な資金は?内訳や資金調達方法・助成金について解説
指定申請書をスムーズに作成するため
訪問看護や介護・福祉事業を開始するには、介護保険法や健康保険法に基づく指定を受ける必要があります。
指定申請の要件を満たした上で、「指定申請書」を提出し、受理されると介護・福祉事業者として営業を開始できます。
指定申請書の添付書類には、従業員数や営業時間などを記載する項目があり、事前に作成した事業計画書の内容を反映させることで、スムーズに申請書を作成できます。
関連記事:訪問看護や訪問介護・福祉の指定申請代行業者とは?選び方や依頼の際の注意点を解説
訪問看護の事業計画書に記載する項目
訪問看護の事業計画書に記載する項目は、主に以下の内容です。
- 会社概要
- 創業の動機と経緯
- 事業内容
- 経営者の略歴
- 取引先情報
- 従業員の採用状況
- 借入状況
- 必要資金
- 資金調達方法
- 事業の展望と収支計画
一つずつ、詳細と記述例をあげていますので、参考にしてください。
会社概要
会社概要には、以下のような内容を記載します。
- 社名・所在地など基本情報
- 設立日
- 役員
- 資本金
- 企業理念・ミッション・ビジョン
社名・所在地・設立日などの基本情報と、企業理念などを簡潔に説明しましょう。
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創業の動機と経緯
訪問看護事業を開始する動機や、その背景を明確に説明します。地域や市場のニーズに応じた創業の経緯を記述することで、開業の必要性を伝えられます。
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事業内容
事業内容では、訪問看護で提供する具体的なサービスやその特徴を明確に記載しましょう。
地域の人口構成や主なターゲットである高齢者に焦点を当て、その人口割合や増減傾向を公的資料に基づいた事業説明を記載することがポイントです。
また、他社との差別化やサービス提供価値を詳細に示し、顧客獲得のための具体的な施策や活動内容もあわせて検討しておきましょう。
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経営者の略歴
経営者や役員の経歴や資格、専門知識・関連する業界経験などを示す必要があります。複数名いる場合は、各自の強みや役割分担も記載すると良いでしょう。
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取引先情報
取引先情報として、主要な取引先との契約状況や提携内容を記述しましょう。
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従業員の採用状況
訪問看護や訪問介護・福祉の指定申請では、人員基準も満たす必要があり、現在の人員構成・採用基準・採用予定・育成プログラムについて明確に示すことが重要です。
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借入状況
開業にあたり、借入状況や貸付先、金利・返済計画を詳細に示す必要があります。これから融資の申請をする場合は、借入金の利用目的や適切な返済計画を記載しましょう。
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必要資金
必要資金としての設備・物品・スタッフ採用などの初期投資に加え、運営費として事業開始後の経費・運営資金に必要な具体的な金額を提示します。
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資金調達方法
必要資金の調達方法として、選択した調達方法や具体的な計画を立てておきましょう。
その際、楽観的な視点だけでなく、リスクの側面を考慮することも重要です。リスクに備えて複数の選択肢を検討し、異なる状況に対処できるように準備することで事業計画書の信ぴょう性が増すでしょう。
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事業の展望と収支計画
事業の展望のために、訪問看護業界の動向や将来的な市場の予測を記載しましょう。
また、収支計画として、財務予測や収入・経費の計画、融資の返済計画などを明確にすることが重要です。売上の推定には客観的な根拠を用い、1人当たりの報酬単価や、予想される顧客数などを具体的に検討しておきましょう。
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訪問看護の事業計画書の書式・書き方
訪問看護の事業計画書には、特定のフォーマットが用意されているわけではなく、一般的にWordやExcelを用いて作成します。
はじめて作成する場合は、テンプレートを利用することがおすすめです。日本政策金融公庫のWebサイトでは、無料で事業計画書のフォーマットをダウンロードできます。
日本政策金融公庫サイト:各種書式ダウンロード|国民生活事業
訪問看護の事業計画書を作成する際の注意点
訪問看護の事業計画書を作成する際には、次の3点に注意しましょう。
具体性と根拠のある内容にする
事業計画書では、抽象的な記述ではなく、数値や具体的な事実に基づいた情報を記載することがポイントです。
特に、融資を受ける際に提出する事業計画書の場合、融資担当者が計画を理解しやすく、根拠や裏付けが明確である必要があります。
事業開始後のリスクや課題を想定した内容にする
事業計画書には成功予測だけでなく、事業開始後に想定されるリスクや課題についても含めることが重要です。
リスクや課題を事前に想定し対策を練ることで、リスクマネジメントにつながり、より着実な事業運営が可能になります。
義務化されたBCP(事業継続計画)もあわせて作成する
介護事業者は、2024年4月1日までにBCP(事業継続計画)の策定が義務化されています。BCPとは、事業の途中で発生する可能性のある災害やトラブルに備え、事業の継続を保証するための計画です。
訪問看護事業でも、事業計画書とは別にBCPの作成を進める必要があります。
ただし、BCPは厚生労働省のガイドラインに沿って策定しなければならないため、個人での作成に自信がないという方は、専門家のサポートを検討することをおすすめします。
>介護事業特化の専門家がBCP策定をサポート|介護事業開業サポートセンター
まとめ
訪問看護における事業計画書は、事業の見通しを立て、創業時の資金調達や融資にも必要なものです。作成しておくことで、指定申請書もスムーズに作成しやすくなります。
なお、訪問看護の事業計画書を作成する際には、以下に注意が必要です。
- 具体性と根拠のある内容にする
- 事業開始後のリスクや課題を想定した内容にする
- 義務化されたBCP(事業継続計画)もあわせて作成する
訪問看護の開業に関するお悩みは、アステージ社労士・行政書士事務所が運営する「介護事業開業サポートセンター」へご相談ください。
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