訪問介護の事業計画書とは?作成する目的・注意点・書き方を解説
- 2024.01.11
訪問介護の事業計画書は、提供するサービスの内容や事業の方向性などに関する計画をまとめた文書であり、訪問介護事業所の開業・運営において不可欠なものです。
しかし、はじめて訪問介護事業所を立ち上げる場合、訪問介護計画書の内容や作成手順がわからないという方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、訪問介護の事業計画書の概要や作成する目的、作成する際の注意点、書き方について解説します。
訪問介護の事業計画書とは
訪問介護の事業計画書とは、提供する訪問介護サービスの内容や事業展開に関する計画をまとめた文書です。
今後の事業の方向性や目的、戦略、運営方法、予算、人員配置、サービスの内容や提供方法を具体的に記述する必要があります。
訪問介護の事業計画書を作成する目的
そもそも、訪問介護の事業計画書は何のために作成するのでしょうか。
ここでは、訪問介護で事業計画書を作成する目的を、大きく次の4つにまとめてご紹介します。
- 経営者として事業展望を立てるため
- 事業者指定や融資の必要書類として
- 利用者に最適なサービスを提供するため
- 職員の理解促進と適正な運営のため
経営者・利用者・職員と、関係者それぞれにとっての重要性について解説していますので、参考にしてみてください。
経営者として事業展望を立てるため
訪問介護事業所を開業して安定した経営基盤を確立するためには、事業の展望を明確にする必要があり、その際に用意するのが事業計画書です。
事業計画書は、経営者が将来の目標や展望を詳細に計画し、実現可能性を検討するために役立ちます。具体的な事業展望を明確に定めることで、経営者は事業の強みや市場での競争力を客観的に把握しやすくなります。
また、変化する市場環境に適応する準備や、リスクに対する戦略的アプローチを検討することで、長期的な事業の成功にも寄与します。
事業者指定や融資の必要書類として
訪問介護などの介護・福祉事業を開始する際には、「事業者指定」を受ける必要があります。事業者指定の際には、事業計画書の提出が求められることがあります。
書類不備があると申請が受理されず、開業日が遅れるおそれがあるため、スムーズな指定申請のためにも事前に準備しておくことが望ましいでしょう。
また、金融機関や金融公庫から融資を受ける場合にも、事業計画書は必要不可欠です。融資機関は貸し手として、貸し倒れのリスクを最小限に抑えるために、事業の透明性や適切な運営方針を確認したいと考えます。
信頼性の高い情報や内容が盛り込まれた事業計画書を用意することで、融資の交渉や審査を進めやすくなります。
指定申請の準備は煩雑で手間のかかる作業であり、法人登記だけでなく、実施サービスごとの指定申請が求められます。指定申請のサポートが必要な場合は、介護・福祉事業に特化した社労士・行政書士事務所へ相談することもおすすめします。
利用者に最適なサービスを提供するため
訪問介護の事業計画書は、利用者に最適なサービスを提供するためにも欠かせないものです。利用者により良いサービスを提供するためには、訪問介護事業所がその地域やコミュニティのニーズを的確に理解し、それに基づいた適切なサービスを提供することが求められます。
事業計画書にサービスの内容や提供方法のほか、利用者のニーズに対する具体的なアプローチを記載することで、利用者にとって最適なケアプランの提案や、サービス品質の向上にもつながりやすくなります。
職員の理解促進と適正な運営のため
事業計画書は、訪問介護職員に事業の目的・戦略・方針の理解を促す際にも有用です。組織の運営方針や予算、人員配置についての情報を明示することで、業務の効果的かつ効率的な遂行を図れます。
また、明確な事業計画書があることで、職員が組織のビジョンや目標に共感しやすくなり、仕事に対するモチベーションアップも期待できます。
このような透明性が組織内のコミュニケーションを円滑にし、運営全体の一体感が醸成されることで、適正な運営につながるでしょう。
訪問介護で事業計画書を作成する際の注意点
訪問介護の事業計画書は、事業者指定や融資など開業準備にも欠かせない書類であるため、戦略的かつ慎重に進めることが重要です。
ここでは、訪問介護で事業計画書を作成する際に気をつけていただきたい、次の4つの注意点について解説します。
- 指定基準を確認・遵守する
- 実際の事業開始後を見据えた計画を作成する
- 客観的かつ具体的に情報を伝える
- BCP(事業継続計画)も作成する
指定基準を確認・遵守する
訪問介護事業を開業するためには、「人員基準」「運営基準」「設備基準」の3つの指定基準を満たす必要があります。
事業者は地域や国の法令・規制・指針に従い、指定基準を遵守しなければならず、事業計画書を作成する際にも、指定基準を遵守した内容が求められます。指定基準を確認し、法令の変更やアップデートにも対応できるようにしておくと良いでしょう。
実際の事業開始後を見据えた計画を作成する
訪問介護事業者として、市場や顧客ニーズの変化や競合状況の推移などを分析し、それに基づいた戦略的な展望を計画書に反映させることで、持続可能な事業展開が可能になります。
事業計画書を作成する際には、現状に即した内容であることに加え、将来を見据えた具体的な計画を策定することが重要です。
具体的には、事業拡大に伴う人材の採用・育成計画や資金調達の必要性、新たなサービスの導入なども考慮し作成しましょう。
客観的かつ具体的に情報を伝える
事業計画書は、関係者に対して明確かつ理解しやすい形で提供されるべきです。例えば、市場調査や競合分析、経済的な見積もり、リスク評価など、事業計画の根拠となる情報を客観的かつ具体的に示すことで、事業計画書の信頼性や説得力を高められます。
特に、利用者に提供するサービスの内容や質に関する情報には、細心の注意を払う必要があります。具体的なケーススタディや成功事例を交え、訪問介護の効果や利点を具体的に説明することが大切です。
介護業界の専門用語は専門的で理解が難しいこともあるため、計画書ではなるべく専門用語を避け、わかりやすい言葉で説明するよう心がけましょう。これにより、関係者全員に事業の魅力が伝わり、共通認識を持ちやすくなります。
BCP(事業継続計画)も作成する
訪問介護事業者は、災害や緊急事態に備え、サービス提供の中断を最小限に抑えるための具体的な対応計画を策定する必要があります。これを「BCP(事業継続計画)」と呼び、2024年4月より介護事業所での策定が義務化されます。
BCPには、人的リソースの確保や物理的なリソースの保全、情報システムの適切な運用、連携先とのコミュニケーションプランなど、さまざまな側面にわたる計画が含まれます。
BCPを策定することで、事業者は災害発生時や非常事態においても迅速かつ適切な対応ができ、事業の継続性を確保できます。BCPの策定は事業の信頼性向上だけでなく、地域社会への貢献となる重要な事項です。
介護・福祉事業のBCP策定については、こちらをあわせてご覧ください。
>介護事業特化の専門家がBCP策定をサポート|介護事業開業サポートセンター
訪問介護の事業計画書の書き方
訪問看護の事業計画書の書き方は、厚生労働省などで統一されたフォーマットが用意されていないため、事業所ごとに独自に作成する必要があります。
一般的には、以下の要素を含めて作成されます。
- 事業内容
- 営業方針
- 財務計画(資金計画)
- 利益計画
- 従業員確保について
- 採用基準
- サービス提供計画
- 経営理念 など
ただし、これらの内容は各事業の特性にあわせて調整することが求められます。
自身・自社での作成が難しい場合は、介護・福祉事業の開業サポートを利用することも検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
訪問介護の事業計画書は、訪問介護サービス提供時に必要な文書であり、事業者指定や融資、事業所内外の連携にも欠かせないものです。
作成する際には、指定基準を順守した上で、ケアプランなど利用者の実態に基づいた内容を、分かりやすくまとめる必要があります。
なお、訪問介護の開業時には、事業計画の作成のほかにも法人設立・指定申請書類・従業員採用・営業・加算算定など多岐にわたる準備を行わなければなりません。
訪問介護の開業準備に不安や疑問がある方は、アステージ社労士・行政書士事務所の「介護事業開業サポートセンター」をご活用ください。当サポートセンターでは、経験豊富な専門家が、会社設立や指定申請から、処遇改善加算・助成金・給与計算・融資に関するご相談まで幅広く承っております。
執筆者情報
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事務所名:アステージ社労士・行政書士事務所
所属等:日本行政書士会連合会/全国社会保険労務士会連合会/大阪府行政書士会/大阪府社会保険労務士会/大阪商工会議所会員
【代表メッセージ】
「介護事業開業サポートセンター」では、これから介護・福祉事業をスタートされる方および既に開業されている方の為に必要な手続きをトータルでサポートしております。
介護・福祉事業の創業を数多くお手伝いしている実績をもとに、法人設立・指定申請などの手続き、助成金や融資、開設後の運営もご相談頂ける「身近な専門家」として、常にお客様の立場に立ったサービスを心がけ、全力でお手伝いさせて頂きます。